R-18「僕と兼さんに似た人の夢を見るんだ」170919〜
・刀剣男士の作り方を学びながら、最近よく見る夢に合点が行く兼堀ちゃんの前世?のおはなし
――歴史を守る崇高な使命に責任感を
配られた小冊子の表紙で微笑む三日月宗近、赤い明朝体で乗せられた標語に一同はやや不満げだ。
「三日月はこんな事を言わないと思う」
骨喰が表情を変えず呟く。
「いめぇじきゃらくたぁというやつだな」
独特の抑揚で鶯丸が含みのある笑いを飛ばした。
「ねぇねぇ厚ぃ、見てよこのノート。今日の為に新調しちゃった。可愛いでしょう?」
「なんかキラキラしてんなぁ!」
降ろしたての帳面を自慢する乱は厚に評価されてご満悦のようだ。
ホワイトボードと長机、パイプ椅子を並べた講堂に集められた当本丸の刀剣男士たちは相変わらず寄ると喧
しい。
「なんや自分やる気起きんわ」
「この冊子の印刷技術は素晴らしい。雅だね」
「ちゃんと最後まで聞いたら宴が始まるって本当だろうねぇ?」
「寺子屋みたいだよね。行ったことないけれど」
各自親しい者と散り散りに席につき口々に喋るものだから収集などつかない。
集合から10分この調子だ。
「はいはい!皆さんお手元にある冊子をご確認下さい」
博士帽を被り、今時珍しい牛乳瓶の底のような分厚い眼鏡を被ったかけた一般より長身のこんのすけが指示
棒でホワイトボードを叩きながら声を上げる。
皆、あらかじめ机の上に配布されていた冊子に注目する。
三日月宗近が表紙のこの冊子だが、顕現後の刀剣男士用に政府が作成した教本だ。
今日は刀剣男士が顕現する条件や仕組み、歴史修正が行われた際の現代への影響などを学ぶ講座を受ける日
である。
政府の元で任務を遂行するにあたりただ闇雲に敵を斬れば良いわけではなく、何故斬らねばならないのかを
学ばせる目的らしい。
効果があるかは知らないが、何故自分が人の身を得て戦わなければならないのかという根底に密かに悩む者
は真剣に聞き入っている。
大半は話半分だが。
「兼さん、ちゃんと聞かないと」
ひそひそ声で耳打ちする堀川国広に、足を組み頬杖をついた和泉守兼定はわーってるよと不機嫌に答える。
大義名分の押し付けは真っ平御免。
和泉守の性に合わない講義への不満…ではなく、さっきまで寝ていたのだ。
洗濯を終えた堀川の手が冷たくなっているだのなんだの言いながら手を握り、陽の当たる縁側に連れ立ち、
腰掛ける堀川の太ももを拝借して安眠を貪る至福のひと時だった。
前触れなく太ももに寝転ばれても驚くことない堀川は悠長に良い天気だねぇと和泉守の髪を撫で、耳掻きし
てあげるよと耳の軟骨に指を引っ掛けて覗き込んでいた。二人して講義がある事をすっかり忘れて寛いでい
たので、時間になっても来ないからと呼びに来た前田は申し訳なさそうな顔をしていた。
「言っとくけど、途中だったんだからな」
「はいはい。終わったらしてあげるから、今はちゃんと聞いて」
してあげるってなんだよ!とムキになりその場に立ち上がった和泉守に静かに!と博士こんのすけの拳骨が
飛んだ。
賢そうな個体に見えて案外武闘派らしい。
陸奥守や太鼓鐘が歯を見せ笑う。
頭のコブを抑えながら覚えてろよと悪態をついた和泉守は腕を組み椅子の背にもたれたまま不貞腐れた。
慣れたものなのか、特段助け舟を出すわけでもなく堀川は講座を真面目に聞き続ける。後からだって僕が聞
いていないと兼さん分からないしと言っていたが。
ある項で刀剣一同が騒然とする。
――刀剣男士への献体について
審神者により人の身を与えられた刀剣男士だが、その身は志願する故人の肉体が元となっているのだそうだ
。
確かに年月とともに纏った逸話が魂を創造してもその肉体が急に現れる等考え難いとも言える。審神者が呼
んだ刀剣の魂を宿す為の人の身が必要…らしい。
どこからか、生け贄?と漏れて、眉根を寄せる者が増える。
この中には明確に人を守る為に力を振るっている刀剣も居る。それが献体とはいえ、人が自分が顕現する為
の依り代に使われていると知り複雑な気持ちを抱くのは至極当然だ。
献体への志願者は年々増えており同意の上とは付け加えられたが。
刀剣男士への献体についてはあくまで魂の容れ物なので容姿や性別、年齢は問われない。
実際に刀剣男士たちの元となった体のほとんどが身の丈すらかすりもしておらず、審神者が人の身を与える
際に提供の機会が合うかどうかだけが基準だという。
「なので、人の身を得た感謝の気持ちを忘れないよう」
一応政府の見解はそうらしい。
勝手に現世に呼び出しておいて恩着せがましい事この上ないが、食ってかかるほど真に受けている者も居な
い。へぇそうなんだと言ったようなものだ。
「あのー、こんのすけさん」
暫し沈黙に支配された場で手を挙げた堀川に視線が集まる。
「なんでしょう」
「献体提供者の生前の記憶は僕らの前世にあたるんでしょうか」
「いえ、貴方方の記憶は現在まで地続きですから、そうではないと思いますよ」
思わぬ問いに隣の和泉守は驚き、横顔を覗き込む。そもそも刀ーものーに前世があるのか。考えたこともな
かった。
堀川は平然と眼前を見据えている。
***
2時間に及ぶ講義が終わり、一同は伸びをしたり速やかに自室に戻ったり夕ご飯の心配をしたり様々だ。中に
はなんかよく分からなかった等身も蓋もないことを言ってのける者も居た。
「ちょっと難しかったよね」
和泉守と自分の分の冊子を揃えて机にトンと落とし高さを揃えた堀川が微笑む。
特に本丸経営における資金の流れは博多藤四郎以外の誰もが理解に達して居なかったが、堀川は一応特筆事
項を冊子に書き込んだり目印をつけて学ぶ姿勢を見せていた。
「勤勉だねえ」
「知りたくなったら言って。僕が分かる範囲なら説明するよ」
これが純粋な好意な分タチが悪いと和泉守は断った。
それよりも…と話を変える。
「なんだよあの質問は」
急に相棒がスピリチュアルなことを口にしたのがずっと引っかかっていたのだ。こんな奴だったか?と。
「うーん、実はさ」
どこから話そうかと糸口を探し言葉を選ぶ堀川はちょっといいかなと和泉守の股引きに手をかけずり下ろし
た。
「なにすんだよ!」
下ろすと言っても尻の割れ目も見えない位置までだが、犬歯が目立つほど大口を開けて抵抗する和泉守に脳
天締めを食らいながらも凝視している堀川はあ!と一言あげる。
「やっぱりそうだ。兼さんここにホクロがあるの知ってた?」
仙腸関節から尾骨にかけての一点を指す。
「んなとこ自分じゃ見えねえし把握してねえよ」
「僕も気づいてなかったんだけど」
気付いてないものに気付き指摘してきた堀川の言っている意味が分からない。
「最近よく見る夢でね、このホクロが見えて」
今度は急に夢の話。頼むから順序立てて説明してくれと和泉守は辟易する。
堀川は黒目で天を見て何かを思い出しながら語り出す。
「僕と兼さんに似た人の夢を見るんだ」
似た人という物言いが引っかかる。あくまで自分たち自身ではない要因があるのか。
「その兼さんに似た人が同じ部分にホクロがあって。もし兼さんにもあるなら、僕らへの献体提供者に関係
あるかなって」
「でも献体とオレらの容姿は全く一致してないって話だぜ」
それはそうだろう。太郎太刀のような長身や短刀たちのような幼い献体が都合良く現れるわけもないし。献
体は男性とも限らない。
「あくまで夢だから現実にあり得ないことが映ってるとは思うんだけど。献体の話を聞いちゃったからね」
堀川は考えすぎだねと舌を出し、急に下ろした股引きを元の位置に戻してごめんと和泉守の身なりを正す。
「つーかよお、尻のホクロが見えるってえのは。どんな夢見てんだよ国広」
含み笑いで堀川の尻、自身のホクロがあるらしい位置を突きながらスケベと揶揄うので、やめてよぉと戯れ
あった。
自室に戻り、約束した耳掻きをしたり、誉の褒賞で溜まった小判を確認して二人で旅行でもするかといった
話をしたりしていつも通り悠然と過ごしていたら早くも就寝時間が来る。
布団の上げ下ろしは和泉守の役割で、二つの敷布団を並べてその上で正座で口付けてからの就寝が二人の慣
例となっていた。
「おやすみ、兼さん」
掛け布団の中で右手首を握ったまま早々に眠りについた和泉守の寝顔に呟くと、その日は堀川もたちまち眠
りについてしまった。
***
ここからは僕が見た夢の話なんですけど。やっぱり僕と兼さんにそっくりな男性が主体で、その日は彼らの
人生を再生しているようでした。
兼さんに似た人は兼さん程では無いけれど背も高く肩甲骨下までの長い髪を一つに結んでいる。朴訥とされ
た雰囲気で笑顔を見せることはない。
僕に似た人は容姿はほとんど変わらないけど、動き回っている様子はなくて僕より少し大人びた雰囲気に思
える。
二人とも僕らに比べて物腰が静かだ。
便宜上、以降それぞれ似ている方を兼さんと僕としますね。
兼さんと僕はどうやら孤児として施設に入り知り合ったようです。
互いに自身の出自については語りませんが、それなりに辛いものがあるのか聞き出すことはしません。
近い時期に近い世代で入ったので自然と一緒に居るようになります。
時代は…いつだろう。戦後はそこまで大きく歴史や文化が変化したわけではないので見た目だけじゃ僕には
予想がつきません。そんなに遠くない過去のようですが。
義務教育修了後に僕らは就職し二人でアパートを借りて暮らすことにしたようです。兼さんは生活用品に関
心が無いようで僕が新調してます。
気になったのが、布団が一組しかないんですよね。客用のものもないし、二人で一枚の布団に収まって寝て
いるようです。
寝相よく体勢を崩さず仰向けで寝る兼さんにはみ出さないよう僕が手足を引っ掛けている。甘えたなのかな
。
とまぁ、このような様子から分かるように二人は恋人同士らしい。
兼さんのお尻のホクロは僕だけが知っている秘密として兼さん自身には黙ってて、たまに触れてほくそ笑む
。その顔を見て、よからぬ事を考えていると兼さんがお仕置きとばかりに覆いかぶさって来るのが、表情の
少ない兼さんらしくない行動で嬉しいんだ。
狭いワンルームで慎ましく暮らす二人はお金には恵まれていないけど、幸せそうだ。二人で生きていけるこ
と以上の幸福など必要としないのだろう。
一度だけ大きな喧嘩をした。
街中で見かけた親子連れを兼さんが目で追ったことに、僕は子供を産めない劣等感から責め立て、売り言葉
に買い言葉で女の人と暮らせばいいと言って飛び出たんだ。
と言っても、お金も行く所も無いからすぐ近くの公園の半球状に埋め込まれて穴が空いてる遊具(どうやって
遊んでなんて呼ぶのだろう?)の中に居る所を発見された。見つけて欲しかったのかもね。
感情的に当たり散らしただけの僕に兼さんはごめん、帰ろうとだけ言って手を引いて二人で帰宅した。
部屋は狭いし布団も一組しかないから離れて寝るなんて事は出来ないので、謝る時期を逃して気まずくても
いつも通りくっついていたら兼さんがポツリポツリ語り出した。言葉少ない兼さんが自分のことを話し出し
て当惑したけど、じっと聞き入った。
自分は孤児ではなく虐待されて施設に来た事。
施設に入るまでまともな教育を受けた事がなく、顔に傷が付いた事は無いが両親の機嫌を損なうと外から見
えない部分を攻撃されて、特に局部をライターで炙られた事が心的外傷で未だに火と、人前で局部を晒す事
が苦手で僕とも性交渉が出来ると思えない事。
孤児の僕に対して両親が生きていることを告白したら関係性が変わってしまうと思って言えずにいた事。
同性の僕となら互いに子供を欲する事は無いだろうという打算と安心があったから子供が欲しければ他所の
女の所へ行けと言われて、自身の色んなものが見透かされた結果のようで心苦しかった事。
僕が居ないと怖くて仕方がない事。
抑揚なく話し続けたのは、感情を込めると辛くなってしまうからだろう。もういいよごめんねと胸に頭を引
き寄せて抱きしめたら背中に手を回して無言で頷いて静かに泣いていた。
つまらない嫉妬に惑わされている場合ではない、僕と同じ苦しみを持つこの人を守らないといけないと思う
出来事だった。
終わりの日はあっさりと来た。
兼さんが事故にあったんだ。
白昼の轢き逃げなのに犯人は見つからなくて、搬送先の病院で一生杖が手放せない事を告げられた。
手にした職を失い、金銭的に治療もままならないので僕が支えるから大丈夫だよと慰めて昼も夜も働いたら
、僕も体を壊した。
保険でもかけていたら僕が死んだら兼さんの生活はむしろ楽になっていたのかな等と考えていたから、精神
的にも限界だったと思う。
そんな僕を察してか、兼さんはもういいからと緊急用の紙幣を渡してきた。どう言う意味か問いただしたら
、頭痛が止まらなくて痛み止めも効かない事を打ち明けられた。
もう終わりたい、と。
できる事なら二人で。
薬でも凶器でも方法は何でも良いが、僕が苦しむ顔は見たくないと言う。勝手だなぁと笑いながら、二人で
なるべく苦しまずに逝く方法を調べた。
図書館のパソコンを使って、「心中 やり方」など率直すぎる単語を検索すると心中の語源が一番に出てきた
。
心中とは情死ともいい、この世で結ばれぬ男女が来世で結ばれる事を願い共に自死することを言う。
辞書に載る本来の定義じゃ男女限定なんだと苦笑する。深い仲の男女どころか今や顔も知らぬ者が集まり集
団自死する事をネット心中と呼ぶらしいので、言葉とは意味が変わったり増えたりすると感心する。
というわけで、僕と兼さんは心中する事にした。
最後の日もいつも通り狭い部屋に、一組の布団に二人で横たわり、手だけ握りしめあった。
不思議と今日は頭が痛くないと漏らした兼さんに、じゃあやめようかと言ってしまいそうになるが、遅かれ
早かれこの日が来るのだろうなと妙に達観していた。
兼さんが最後まで出来ずにすまないと真面目に謝ってきたので、そういえば僕ら童貞のまま死ぬんだねと返
したら、目を丸くして僕がこんな事を言うなんて意外だと驚いていた。
最後にキスしようかと僕の方から兼さんに覆いかぶさって口付けたら、肩を固定されていつもより深く舌を
ねぶられた。
本当は兼さんも僕としたかったのかな、セックス。なんて考えながら体を委ねる。
そういえばね、心中ってじょーしって言って来世で結ばれる事を誓うんだってと何気なく呟いたら、いいの
か?って聞かれたから、なにが?って聞き返した。
二人で生きてきて、二人で死ぬ。僕には自然な事だ。
でも来世なんてのがあるなら女の子に生まれたいなぁ。
どうして?
ふふ、××さんの赤ちゃん産むんだ。
お前が?
あ、××さんが僕の子を産んでもいいよ?
オレが女にか…考えたくないな。
あはは、きっと美人だよ。
その後、意識を失うその時まで二人の夢を見た。
僕らは幸せだった。
***
目覚めると目尻から?に乾いた感覚があり、一拍置いて涙の跡だと気づく。
僕らに似た誰かの悲しいような嬉しいような不思議な夢だった。
なんとなくもうこの夢は見ない気がした。
兼さんが指摘した通り、献体提供者があんなに似通った容姿をしているなんてありえない。
夢の中でも体を壊し、来世で結ばれることを望んでいたことから献体への提供者を志願するには様々な点が
矛盾している。
「単なる不思議な夢…かぁ」
行動するにはまだ早い時間帯に目覚めてしまったのでどうしようかなと思案していると、横で眠る兼さんに
腕を掴まれて布団に引き込まれてしまった。
「えっ兼さんどうしたの」
起きてたのと驚くも、むにゃむにゃと寝言を言っているのでどうやら悪い寝相に巻き込まれただけのようだ
。
兼さんの布団に二人で収まって。窮屈だけど満足する。
あの二人もこんな感じで寝ていたのだろうかなんて考えながら、気づいたら再び眠りについていた。
次に目が覚めた時、兼さんが自分の分の布団を押入れに収納する後ろ姿が視界に入る。やはりもうあの二人
の夢は見れないのだなとぼんやり自覚した。
「おはようさん。珍しいなオレより眠りこけるなんざ」
ニッと歯を見せた兼さんが蹲踞の格好で寝起きの僕を覗き込む。
よく眠れたのか上機嫌だ。
「布団上げちまいたいからお前も起きろ」
早朝の澄んだ空気の中で差し込む光が兼さんの笑顔をキラキラ照らしている。兼さんはかっこいいけれど、
笑うと少し幼い面も見えて可愛いなと思う。本人に言ったら拗ねるから言えないけれど。
起き抜けの頭でじっと兼さんの顔を見つめていたらなんだよと首を傾げられて、ふいに口からねぇ兼さんと
言葉が出てきて。
「赤ちゃんほしい?」
唐突に尋ねてしまった。
寝ぼけて変な事言っちゃったと気づくまで約一分。結構な間だったけど何の合いの手も入らない。
あれ?と兼さんの顔を覗き込むと、耳まで真っ赤な顔で口をもごもごさせ答えに窮している。
こんな表情の兼さんを見た事がないので呆気にとられてしまう。
「お、お前なー」
赤面したままの兼さんが深いため息をついて顔を覆う。
呼ばれたのではいと答えたが、はいじゃねーよと叱られる。理不尽じゃないかな。
「そういう誘い方すんのかよ」
口元を抑えながら照れる姿に疑問が浮かぶ。
誘いってなんだろうと頭の中を回転させていると、さっきまで起きろと言っていた兼さんが寝たままの僕に
覆いかぶさるように口付けてきた。
これじゃ起きれないし急にどうしたんだろうと更に疑問が増える。
まだ寝巻きの僕と違って既に着替えている兼さんが帯を緩めるからますます分からない。
けれど、顎を持ち上げられて目があったまま下唇を甘噛みされると、恥ずかしいけど気持ちよくて自然と舌
で求めてしまう。
ちゅっちゅっと互いの唇や舌を舐めたり吸ったりついばんで、ただでさえ寝起きの頭がますます空っぽにな
っていく。
「口吸いだけじゃ出来ねえぜ」
下着が剥ぎ取られ風が通る。
股関節を掴んで腰を押し付けられて、流石に状況を把握する。
するんだ…セックス。
「湯浴みの時間なんかないんだから着けてよ」
「着けたら出来ねえだろ」
御構い無しに濡れた先端そのままを蕾にあてがわれて言葉と裏腹に高揚していく。
するんだろと囁かれて体が跳ねる。
「子作り…」
慣らすように何度かゆっくり抽送した後、繋がったまま背中に手を回し抱きしめて、兼さん赤ちゃん欲しい
の?と尋ねたら中でより膨張して嬌声が漏れ出た。
「オレたちは刀だぜ」
兼さんの言葉の真意は分からないけれど、何にも挟まず体が溶け合うのはとても気持ち良くていいなぁと思
った。
僕は女の子じゃないし、僕らは人間じゃない。
一応付喪神という神様らしいから幾つかの神話のように子を成すことは出来るかもしれないけど、このお腹
を痛めることは無いと思う。
誰かに元となる体を貰って、何かを託されていたとしても僕は兼さんと僕らの為にしか戦えないし、生きら
れない。
政府の言う崇高な使命なんてものは知ったことではないけれど(主さん、ごめんなさい)もし愛する人と共に生
きていく幸せを願う意思なんてものをこの体が宿しているなら、僕のような殺す道具でも叶えられる気がし
て。
名も知らぬ夢の中の二人に向かって心の中で大丈夫だよって唱えてみた。
【了】
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